はじめに
手袋の必要性と選び方の重要性
作業現場において、作業用手袋は単なる防寒具ではなく、手指を保護し、作業効率を高めるための必須アイテムです。建設現場でのケガの多くが手指に関わるものであり、適切な手袋を選ぶことは、事故防止に直結します。多種多様な作業用手袋の中から、自身の作業内容に最適なものを選ぶことが、作業性と安全性を両立させる上で極めて重要となります。
対象となる作業者(建設・農業・精密作業など)
この特集は、建設業、農業、精密作業といった多岐にわたる現場で働く労働者の方々、特に現場責任者や調達担当者の方々を対象としています。作業性、安全性、耐久性を重視した手袋選びのポイントと、具体的な手袋の種類や機能について詳しく解説し、現場での安全と効率向上に貢献することを目指します。
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作業内容別に見る最適な手袋の選び方
作業用手袋は、その作業内容によって求められる機能が大きく異なります。ここでは、具体的な作業内容に合わせた手袋選びのポイントを解説します。
刃物・工具を使う作業に適した手袋
刃物や鋭利な工具を使用する作業では、手指の切創事故のリスクが常に伴います。そのため、耐切創性に優れた手袋の着用が必須です。
- 耐切創性
- ケブラーやステンレススチール繊維、ダイニーマなどの素材が優れた耐切創性を発揮します。
欧州規格「EN388:2016」では、耐切創性の強さがA~Fの6段階で評価されており、数字が大きいほど切れにくい特性を持ちます。
回転する刃物を扱う際は、軍手などの繊維が巻き込まれる可能性があるため、革手袋の使用が推奨されます。
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油や水を扱う作業に適した手袋
油や水を扱う作業では、滑りやすさや薬品による手の荒れ、汚染が懸念されます。
- 耐油性・耐薬品性
- ニトリルゴムや塩化ビニール製のゴム手袋が、耐油性・耐薬品性に優れています。
機械整備や石油、薬品の取り扱い、水産加工業などに適しています。 - 防水性
- 手袋全体が樹脂やゴムでコーティングされた「オールコート手袋」や、腕まで覆う「腕カバー付手袋」が水場での作業に適しています。
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摩擦や衝撃が生じる作業向け
重い荷物の運搬や、摩擦・衝撃が加わりやすい作業には、耐久性とグリップ力に優れた手袋が求められます。
- グリップ力
- 手のひらにゴムや樹脂のボツボツが付いた「滑り止め軍手」や、手のひら全面がゴムでコーティングされた「ゴム張り・ゴム引き手袋」が、重いものや滑りやすいものをしっかりと掴むのに適しています。
- 耐久性・保護性能
- 牛革や天然ゴムは、引き裂きやひっかきに強く、耐久性に優れています。
厚手の手袋は、衝撃吸収性にも優れ、手指への負担を軽減します。
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高温や火花が出る作業(溶接など)向け
溶接作業や高温の環境、火花が飛散する現場では、耐熱性・耐火性が最も重要な機能です。
- 耐熱性・耐火性
- 革手袋、特に牛床革は厚みがあり、耐久性と耐熱性に優れているため、溶接作業などに適しています。
革手袋の加工方法では、縫い代が内側にある「内縫い」タイプが、熱や火花による糸切れを防ぎやすい特徴があります。 - アラミド繊維やシリコーン、アルミなどの素材も高い耐熱性を持っています。
精密作業で求められる機能性
電子部品の組み立てや品質検査など、指先の感覚が重要な精密作業では、フィット感と薄さが重視されます。
- フィット感・薄さ
- 薄手の合成繊維(ナイロン、ポリウレタンなど)や綿素材の手袋が、素手感覚で作業できるため、指先を自由に動かしやすいです。
- 「背抜き手袋」は、手のひら側にのみコーティングを施し、手の甲はコーティングしないことで通気性を保ちつつ、指先の感覚を活かせます。
- 低発塵性・静電気防止
- 精密機器を扱う現場では、ホコリや糸くずの発生を抑える低発塵性の手袋や、静電気によるトラブルを防ぐ静電気防止手袋が適しています。
主な作業用手袋の種類と素材の特徴
作業用手袋は、その作業内容によって求められる機能が大きく異なります。ここでは、具体的な作業内容に合わせた手袋選びのポイントを解説します。
軍手(純綿・混紡・特紡)の違い
軍手は、最も一般的で安価な作業用手袋です。
| 軍手種類 | ![]() 純綿軍手 |
![]() 混紡軍手 |
![]() 特紡軍手 |
|---|---|---|---|
| 素材 | 綿100% | 綿とポリエステルやアクリルなどの化学繊維を混ぜ合わせた糸 | 繊維くずを再紡績した特紡糸 |
| 特徴 | 吸汗性に優れ、肌触りが良く、燃えにくいのが特徴です。火や熱を扱う作業(長時間連続しない場合)や、耐熱手袋のインナーとしても使用されます。 | 安価ですが機能とコストのバランスに乏しい傾向があります。 | 非常に低価格です。純綿に比べて耐久性に劣るため、使い捨てされることも多く、一般作業やDIY、園芸など幅広く利用されますが、熱には弱いです。 |
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ゴム手袋(ウレタン・天然ゴム・ニトリル・塩化ビニール)の特性
ゴム手袋は、水や薬品を扱う作業に広く用いられます。
| 種類 | ![]() ウレタン手袋 |
![]() 天然ゴム手袋 |
![]() ニトリルゴム手袋 |
![]() 塩化ビニール手袋 |
|---|---|---|---|---|
| 素材 | ウレタンゴム(※単体よりも薄手袋に塗布した背抜き手袋タイプが一般的) | 天然ゴム(ラテックス) | ニトリルゴム | 塩化ビニール(プラスチック) |
| 特徴 | 伸縮性があり、手にフィットするため細かい作業に適しています。通気性があり、耐候性・耐溶剤性も良好で、農業や精密機械検査、品質管理に最適です。 | 柔軟性があり、低温環境下でも硬くなりにくいです。引き裂きやひっかきに強いですが、油や溶剤には弱い特徴があります。高い滑り止め効果があり、荷物運搬や建築・土木作業に適しています。ゴムアレルギーの方には注意が必要です。 | 耐油性・耐薬品性・強度に優れています。柔軟性に乏しく低温で硬くなる傾向がありますが、油や薬品の取り扱い、機械整備、組み立て作業に最適です。タッチパネル対応の製品も多いです。 | 耐油性・耐摩耗性・耐候性に優れ、比較的安価です。農業、漁業、水産加工、土木作業、家庭での炊事・洗濯などに適していますが、60℃以上の熱には弱く、食品関係の現場では使用を避けるべきとされています。 |
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革手袋(牛本革・牛床革・豚革・羊革・合皮)の特長
革手袋は、高い保護性能と耐久性が特徴で、ハードな作業に多く用いられます。
| 種類 | ![]() 牛床革手袋 |
![]() 牛本革(牛表革)手袋 |
![]() 豚革手袋・羊革手袋 |
![]() 合皮(合成皮革・人工皮革)手袋 |
|---|---|---|---|---|
| 素材 | 牛革の真皮部分を使用 | 牛革の表皮部分を使用(クレスト革) | 豚・羊の皮を使用 | 合成素材 |
| 特徴 | 厚みがあり耐久性と耐熱性に優れています。溶接作業や自動車・鉄鋼・造船などの重作業で広く普及しており、比較的安価です。 | 柔らかく手にフィットし、使い心地が良いです。耐久性、特に引き裂きに強く、建築土木、鉄骨鉄筋、運輸倉庫、荷役、重機操作など幅広い用途で愛用されています。 | 牛革よりも薄手で柔らかく、通気性と屈曲性に優れています。長時間の軽作業や指先の感覚を活かす作業に適しており、価格も手頃です。豚や羊の皮(スキン)は薄いので床革・表革のように分けて使われる事はありません。 | 柔らかく滑りにくい特性があります。価格が安定しており、天然皮革に近い風合いと耐久性、通気性、フィット性を持ちます。ただし、耐熱性能は天然皮革に劣ります。。 |
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手袋選びで重視すべきポイント
適切な作業用手袋を選ぶためには、単に素材だけでなく、作業内容と使用環境に合わせた機能性を考慮することが重要です。
作業性を高めるフィット感・グリップ力
- フィット感
- 手袋のフィット感は作業のしやすさに直結します。大きすぎると工具を扱いにくく、小さすぎると指を曲げにくくなります。試着してジャストサイズの製品を選びましょう。
薄手のタイプは素手感覚で細かい作業に向き、袖口にマジックテープが付いているタイプはずれを防ぎ、フィット感を高めます。 - グリップ力
- 運搬作業など、物をしっかりと掴む必要がある場合は、手のひら部分に滑り止め加工が施された手袋を選びましょう。ゴムや樹脂コーティングされたものが効果的です。
安全性(耐切創・耐熱・耐薬品など)
- 耐切創性
- 刃物や鋭利なものによる切創事故を防ぐため、耐切創性の高い手袋を選びます。欧州規格「EN388」の耐切創レベルを参考にしましょう。
- 耐熱性
- 火気や高温の環境での作業には、耐熱性の高い革手袋やアラミド繊維製の手袋を選び、火傷のリスクを低減します。
- 耐薬品性
- 薬品を扱う作業では、ニトリルゴムや塩化ビニールなど、使用する薬品に対する耐性を持つ手袋を選び、経皮吸収や皮膚刺激を防ぎます。
- 静電気防止
- 電子部品や半導体工場など、静電気を嫌う現場では、静電気防止機能を持つ手袋を選び、製品の故障や引火事故を防ぎます。
耐久性とコストパフォーマンス
- 耐久性
- ハードな作業環境で使用する手袋は、素材、構造、厚みなどを考慮し、耐久性の高いものを選びましょう。革や天然ゴムは比較的耐久性に優れています。
- コストパフォーマンス
- 作業用手袋は消耗品であり、作業内容によっては頻繁な交換が必要になります。無理なく定期的に買い替えられる価格帯で、かつ必要な耐久性を備えた製品を選ぶことが重要です。
防寒・防水・滑り止め等の追加機能
屋外や冷凍庫内など寒い場所での作業には、裏起毛やボア、シンサレートなどの保温素材を用いた防寒手袋を選び、手の冷えを防ぎます。
- 防水性
- 水濡れや水仕事が多い場合は、ポリウレタンコーティングや防水フィルムを挟んだ防水手袋を選び、手が濡れることによる冷えや手荒れを防ぎます。
- 透湿性
- 長時間使用する中で手の蒸れが気になる場合は、手の甲側がコーティングされていない「背抜きタイプ」や、透湿性素材を使用した手袋を選び、快適性を保ちます。
- タッチパネル対応
- スマートフォンやタブレットを操作する機会が多い場合は、手袋を外さずに操作できるタッチパネル対応機能があると、作業効率が向上します。
メンテナンスと長く使うためのコツ
作業用手袋を長く安全に使うためには、適切なメンテナンスが欠かせません。
手袋の洗い方・保管の基本
- 洗い方
- 多くの作業用手袋は、ぬるま湯での手洗いが基本です。洗剤を使う場合は、中性洗剤を薄めて優しく洗いましょう。ゴム手袋の場合は、使用後に洗剤成分をしっかり洗い流すことが劣化防止につながります。
- 臭いが気になる場合は、裏返して洗うことで内側の皮脂や汗による雑菌の繁殖を抑えられます。除菌効果のある洗剤を使うのも効果的です。
- 革手袋は水に弱いため、シャンプーとコンディショナーを使って洗う方法もありますが、水に浸しすぎないよう注意が必要です。
- 乾かし方
- 洗った手袋は、直射日光を避けて風通しの良い場所で陰干ししましょう。乾燥機や直射日光は、素材の変形や劣化の原因となることがあります。
- 特にゴム手袋の内側は湿気がこもりやすいため、裏返して乾かすと良いでしょう。乾燥を早めるために、アルコールスプレーを吹きかける方法もあります。
- 保管方法
- 使用しない時は、手袋をきれいに乾かした後、涼しく乾燥した場所に保管しましょう。
交換時期の目安と耐久性の見極め方
- 損傷の確認
- 使用前には、手袋に穴、傷、破れ、縫い目のほつれなどの損傷がないかを確認しましょう。小さな損傷でも安全性が損なわれる可能性があるため、速やかに交換が必要です。
- 素材の劣化
- ゴム手袋は、硬くなったり、弾力性が失われたりしたら交換の目安です。劣化が進むとグリップ力が低下し、作業ミスにつながることがあります。
- 革手袋は、使い込むほど手に馴染みますが、擦り切れやひび割れが目立ってきたら保護性能が低下している証拠です。
- 機能の低下
- 滑り止め効果が薄れたり、防水性や耐熱性が低下したと感じる場合も、交換を検討しましょう。
よくあるトラブルとその対策
- 手袋の臭い
- 臭いの主な原因は、手袋の内側にこもった汗による雑菌の繁殖です。裏返しにして洗い、しっかり乾燥させることで対策できます。抗菌防臭加工が施された手袋を選ぶのも有効です。
- 手荒れ・アレルギー
- 特定の素材にアレルギーがある場合や、ゴム手袋で手荒れしやすい場合は、インナー手袋の着用が有効です。天然コットン100%のインナー手袋は、汗を吸収し、肌への刺激を軽減します。
- 回転体への巻き込み
- ドリルなどの回転部分がある機械を操作する際は、軍手などの繊維が巻き込まれる危険があるため、使用を避け、革手袋など巻き込みにくい素材の手袋を選びましょう。労働安全衛生規則でも、回転する刃物に手が巻き込まれるおそれのある作業では手袋を使用しないよう定められている点に注意が必要です。
まとめ
作業性と安全を両立する手袋選びのポイント再確認
作業現場における手袋は、手指の保護と作業効率の向上に不可欠なアイテムです。建設、農業、精密作業といった多様な現場で、作業性と安全性を両立させるためには、以下のポイントを再確認し、適切な手袋を選ぶことが重要です。
- 作業内容に応じた機能性の選定
- 刃物を使うなら耐切創性、油や水を扱うなら耐油・防水性、高温作業なら耐熱性、精密作業ならフィット感と薄さを重視しましょう。
- 素材の特性理解
- 軍手、ゴム手袋(ウレタン、天然ゴム、ニトリル、塩化ビニール)、革手袋(牛本革、牛床革、豚革、羊革、合皮)など、それぞれの素材が持つ特性を理解し、用途に合わせることが大切です。
- フィット感とグリップ力
- 作業のしやすさに直結するため、サイズや厚み、滑り止め加工の有無を確認し、自身の手に合うものを選びましょう。
- 耐久性とコストパフォーマンス
- 消耗品である手袋は、必要な耐久性を持ちつつ、継続的に使用できる価格帯の製品を選ぶことで、長期的な安全と経済性を確保できます。
- メンテナンスの習慣化
- 定期的な洗浄と適切な乾燥・保管により、手袋の寿命を延ばし、衛生的に保つことができます。
導入・見直しのすすめ
現場で働く法人の方々にとって、作業用手袋は「安ければ良い」というものではありません。最適な手袋を選ぶことは、従業員の安全を守り、作業効率を向上させ、ひいては企業の生産性向上にもつながります。
現在使用している手袋が、本当に作業内容と使用環境に合致しているか、一度見直してみることをおすすめします。最新の製品には、以前にはなかった高機能な手袋も多数登場しています。本記事でご紹介したポイントを参考に、作業性と安全性を高める最適な手袋を見つけ、現場の労働環境改善に役立ててください。
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